ひみつだよ。
 ぜったい、誰にも言っちゃいけない。
                             晴れた日の雪景色

 きらきらして、目がくらんじゃうもの。
 晴れた日の雪景色、医務室でぼくが見たひみつ、善法寺伊作先輩……不運委員長。
 寝込んでいる時、その他の時。いいこ、いいこって撫でてくれる。
 すごく、嬉しいんだ。ぼくだけじゃないよ。秘密だよ。
 プロだってそうなんだ。
 でもね、朝の雪は晴れてたからきらきらまぶしくて、ぼくは目がくらんじゃったから、何も見てないんだ。

































 ひみつだ。
 誰にも、ぜったい言えるわけない。
                                   夜更けの霜

 霜がおりるほど冷えた夜の、会計委員会の鍛錬なんて、地獄行きの関札みたいなものだ。
 団蔵が洟を啜っているのを聞きながら匍匐前進している時に、真っ白な地面を見かけた。
 霜の上にその人が立っていた。
 白い寝間着で立ってる、善法寺伊作先輩……不運委員長。
 それから、霜の白さの上では目立つ、黒の。
 ………潮江先輩を叱りつけながら、凍えたぼくらを暖めて、頭を撫でていく手。
 その手が温かかったから、ぼくの見たものは夜更けの霜みたいに明日になったら何も残ってないんだ。





























 ぜったい、ひみつ。
 誰にも言えない。
                                 夜明けの別れ

 作法委員会の面々はよく善法寺伊作先輩……不運委員長に頭をなでなでされる。
 立花先輩と綾部先輩がこぞって善法寺先輩の手を頭に乗せるせいだ。
 腑に落ちない顔をしながら、善法寺先輩はよしよし撫でる。
 ぼくは聞いてみたいことがある。
 先輩は、あの朝まだき、夜明けの別れの時も、もしや頭を撫でるのですか、と。
 あちらはぼくが見たのに気づいているけど、ぼくは目をそらしてそこから駆けだしたから、後のことは何も知らないんだ。























 言えないよ。
 ぜったい、誰にもひみつのこと。
                                        その後の心境

 善法寺伊作先輩……不運委員長に聞いてこい聞いてこいとけしかけられて、ぼくは気まずい。
 お話がありますと言ったら、善法寺先輩はぼくの前に綺麗にきちんと座って聞こうとしてくれた。
 ますます気まずい。
 思い切って口を開こうとしたら、善法寺先輩は何かに納得がいった顔をすると、ぼくの頭を柔らかに撫でた。
 部屋を出る時に後ろから善法寺先輩を呼ぶ声がしたような気がしたけど、戸はきちんと閉めちゃったから、ぼくには何も聞こえないんだ。