直後の会話。


「ところでこの打掛、あの人のにしちゃ地味だと思うんだけど、何故こんな柄にしたかね」
「知っていますが、聞かなきゃよかったって言いますよ」
「言ってみてよ」
「あなたの生まれた朝の風景だそうですよ」
「聞かなきゃよかった」






 ………というわけで、『山本陣内の三度の訪問』を読んでくださってありがとうございました。
 捏造妄想炸裂上等!な話でした。私の書く雑渡昆奈門はなんかヘンなひとな気がします。

 補足説明的なものを少し(それ書かなきゃって時点で創作としてどうなの…)。

 一度目の訪問。
 現在から9年前のことです。
 雑渡さんはタソガレドキ忍・オオカミ隊(火薬担当)の小頭でした。
 ある日、雑渡さんが大火傷して帰って来ました。
 自分の部下である、尊奈門のお父さんを助けに火の中に特攻したからです。
 当時の組頭に「お前が小頭な、山本」「雑渡を楽にしてやれよ」と言われた山本陣内氏は、
 雑渡昆奈門氏をどうしても死なせたくなかったので、
 当時10歳の尊奈門君が「小頭のお具合は、わるいのですかっ」と聞いてきたのをうまく言いくるめて(爆)
 雑渡さんの看病に付けました。
 おかげで何とか一命を取り留めた雑渡さん。
 火傷ということで、炎の中で何かを思い出しました。
 山本陣内氏と関わることです。


 二度目の訪問。
 一度目の訪問から数ヶ月後のことです。
 雑渡さんを訪ねる途中、山本陣内氏は当時の組頭に会いました。
 「仔犬」は尊奈門、「火熊」(この書き方はわざとです)は陣内左衛門のことを指します。
 組頭はハヤブサ隊かクロワシ隊か、どちらかの出身です。
 「身体が使えなくなった忍は情報を伝えるだけ伝えて死ぬしかないぞ」と言われましたが、
 山本陣内氏としては、言葉で表すのではなく、行動で伝えるしかない忍がいるのだ、と、主張します。

 その「行動で伝えるしかない忍」は雑渡昆奈門氏と山本陣内氏の因縁。
 雑渡さんのお父さんでした。
 この話から14年前、つまり現在から23年前のこと。
 当時オオカミ隊の小頭だった雑渡さんのお父さんは、山本陣内氏との忍務中に死にました。
 山本陣内氏を庇って怪我をして、囮になったのです。
 当時の雑渡さんは、そんな父の最期を聞きたがらなかったので、
 山本陣内氏は何も伝えませんでした。言ったことも。したことも。
 負い目だけが残りました。

 けれど時が経ち、雑渡さんの中でも整理がつきました。
 今日がわだかまりを取る日です。山本陣内氏との関係を正常にする時です。
 わだかまりは消え、関係は修復されるでしょう。
 ただ、雑渡さんの中にある乾きは消えません。
 求めている水=言葉≒愛情は、雑渡さんが変わらなくては、誰からも受け取れるものではないからです。


 三度目の訪問。
 二度目の訪問から1ヶ月後くらい。
 雑渡さんのところに照星さんからお薬が届きました。
 「行触神の火傷の薬」です。雑渡さんは行触神に遭ったことがあります(「祝水」)。

 雑渡さんには予感のようなものがあります。
 父を失ったことで乾いた自分に必要な水=言葉≒愛情を、もたらすのはあの行触神の童子かもしれない、と。
 なぜなら、もう出会っているから。
 炎の中に飛び込んだのは、それが遠いきっかけにあるから。

 山本陣内氏にはそれは分かりませんが、なんとなく狂おしい「欲求」を感じ取って困ります。
 困るけれど、今目の前にいる雑渡さんには養生が必要なので、
 保護者気質の山本陣内氏は現実処理をして問題を先送りすることにしました。
 それでいいんです。雑渡さんにすら良くわかっちゃいませんから。


 ………そんな話です。
 細かい設定盛り込みすぎてよくわからなくなりましたスミマセン。

 ちなみに小道具で出てきてる打掛は、雑渡さんの父の私物です。一番大事にしてたやつです。
 彼の趣味は女装でした。日常的に女装してました。
 柄の由来は上記のとおり。
 タソガレドキ軍取扱説明書の最後の方にぼんやり設定書いてあるので、気になる方はどうぞ。