夏到来



 叩きつけるような。
 突き刺すような。
 開けた口は大空へ。
 激しい雨を吸い込んで、叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ。


 薄い金色に染まった空が、高いところでは強い風が吹くのだろう、重たい雲に打ち寄せられて灰色に曇る。
 落ちるひとしずく。すぐにあふれだす熱情のような激しい雨。

 (あめのなかではうたはうたにならないからこのおもいが だれか にきこえることはない)

 叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ。
 目を閉じて、口を開けて。風のない叩きつける雨の中で、おおごえで叫ぶ。

 (いつかうたがうたになればこのおもいが あなた にとどくことがあるのかもしれない)



 雨の中で目を開いた。この雲の裏に星がある。あふれるばかりの星がある。
 夕立が過ぎたら満天下で歌おう。
 ああ。
 夏が来た。
 あの、夏が、来た。